CVIC通信

CVICより皆様へのメッセージを届けます

“Coronary Artery Calcification”「冠動脈石灰化」

冠動脈CT検査の時には、冠動脈の石灰化という動脈硬化による変化がはっきりと描出されます。しかし、石灰化があるからといって、そこに治療が必要な狭窄病変が存在することにはなりません。この石灰化は、CTでは白い高信号として映るために、しばしば冠動脈狭窄の診断の邪魔になります。実際に、石灰化は、冠動脈CT検査の病変的中率を落とす原因のひとつとして有名です。

一方で、冠動脈に石灰化があるということは、動脈硬化が存在するということです。その点から、特に欧米で非常に多くの研究が行われています。標準的な方法で計算された冠動脈石灰化スコア(Agatson Score)が高値(>400)であれば、冠動脈疾患の罹患率が高く、さらに将来の死亡率が高いというDataが沢山あります。また、CVICで盛んに行われている、MRIを使って撮影する冠動脈MRAの診断の際に、冠動脈石灰化の情報が役立つ場合があります。冠動脈MRAで診断に迷う場合には、その部位の冠動脈石灰化の情報を参考にすると診断の助けになる場合があります。

我々の施設では、この石灰化スコアが高値である患者様が非常に多く来院されます。必ずしもそこに、治療が必要な狭窄病変が存在するわけではなく、治療に直結しないことから、日本ではあまり重要視されていない側面もあると思います。

ところが、冠動脈石灰化を見た患者様の驚きは、我々が想像する以上のものがあります。白いくっきりと輝いているものが自分の冠動脈にちりばめたように存在しているのは、気持ちが悪いものであるには間違いありません。その際によく言われるのが、以下のフレーズです。

「石灰化を取り除けませんか?」

残念ながら、取り除くにはロータブレータと呼ばれるダイヤモンドヘッドのドリルで削らないといけません。今の医学では、冠動脈石灰化を薬で取り除くことは無理です。しかし、冠動脈危険因子に十分気をつけて、それらをきちんとコントロールすることで、冠動脈石灰化の進展を遅らせることは出来ると思います。そう説明すると、患者様は無症状でも飲んでいる高血圧や高コレステロール血症の薬をきちんと内服し、薬剤コンプライアンスが向上します。それにより将来の冠動脈疾患のイベントが減らせるのではないかと考えられています。また将来的の冠動脈疾患発症の予測には、従来の冠動脈疾患の危険因子の組合せによる予測よりも、冠動脈石灰化スコア測定の方が優れているというDataも出ています。

「心臓病を見つける心臓ドックから心臓病にならないための心臓ドックへ」

今後は、このような予防的なことにも積極的に取り組んでいけるように、CVICでも工夫を凝らせていければと願っています。

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